獅子

雄獅子
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雌獅子
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◆構成について
獅子は、二匹で雌雄一対である。獅子の足に似せた股引きをはき、一匹につき、獅子頭と前足、後足と尻尾を担当する人が一人ずつ、合わせて二人が入り、胴体となる獅子の着物を上から被り、前足の人が獅子頭を持ち、後足の人は尻尾を担いで、チャンメラや太鼓、銅鑼などの音に合わせて表情豊かに獅子舞楽を演じる。

◆意匠
獅子頭・・その大部分は木製で、後ろは刳り貫かれ、その縁には鈴を多数付けており、動いたときの音による演出を考えたものであろう。後ろから鼻腔を通して外を見るようになっている。
眉・角などには金属を用いる。耳は表地が緋羅紗、裏地は赤く染めた木綿である。
たてがみ、鼻の下の発は獣毛を用いる。
雌雄の違いは頭の角で見分けることができる。二本の角を持つものが雄、一本の角を持つものが雌である。更に角の形を詳細に見ると雌の角にのみ、その付け根に小さな突起が見られる。
獅子の着物(胴体)・・麻布に、多数の麻紐を裏で十文字に交差させ、表で結び付け、獅子の体毛を表現する。
獅子頭を通すために開けられた大きな穴には部分的にたてがみを付けている。また、その穴の縁の両端にグローブ状のものが二つ付いており、これに手を通すことで着物の前方が下に落ちるのを防いでいる。後ろには尻尾を通すための穴が開いている。
この着物においても雌雄による違いを色によってみることができる。
雄は胴体左の前と胴体右の後の約二分の一が白色になっており、他の部分は赤くなっている。
雌は、色違い、逆の配置で、胴体左の後と胴体右の前の約二分の一が黄色になっており、他の部分は赤くなっている。
尻尾・・芯が竹で作られ、その半分を割いて、中に竹を割って葉巻状にしたものに麻を被せたものを詰めて膨らませている。割いた部分には獣毛を束ねたものを巻いてある。芯の先端は紐で縛り先細りにしている。
尻尾も雌雄の違いを色によってみることができ、色の組合せは獅子の着物と全く同じといってよい。
股引き(獅子の足)・・木綿の長ズボンの股から下を赤く染めている。赤く染めた麻の繊維を束ねたものを胴体と同様に結び付けている。

◆年代
文書から最初の獅子の製作年代は、元禄4年(1691)より遡り、その当時の獅子は、一匹のみで尻は「籠」 を用いて、これに「車」を付けて引き回していたようである。このことは当時、獅子頭と前足の使い手が一人で獅子を演じていたことが想像させられ、獅子自体の祖形は元禄四年より前に遡ると考えられる。
そして、「いざくら(井桜)屋勘七」 が元禄4年頃、新たな獅子舞楽を長崎から習ったことで獅子は二匹となり、それぞれ一匹に二人が入る現代と同様の姿になったものと思われる。
現代の獅子の姿は元禄4年に遡り、その原形は長崎に求められる。
以上のことから獅子は、元禄、明和、弘化から現代に至るまで数々の造り替え、修理等を受けながらも江戸期の祭り文化を受け継いだ貴重な文化財である。